萩原 亮
Ryo HagiwaraSTATEMENT
彫刻の彫刻らしさは、 素材やプロセスに作品のかたち(form / format)が 大きく影響される点にあると考えている。かつて鉄溶接を彫刻に持ち込んだフリオ・ゴンサレスが、線としての構造や空間を区切る虚のボリュームといった新しい概念を生み出したように、素材の更新は彫刻の概念そのものを更新してきた。
私は3DCGを彫刻の新たな素材として捉え、複製や拡散、改変の容易さ、物理的なオリジナルの不在といった特性を制約として引き受けながら、彫刻のかたちがどのように変化しうるのかを制作を通して探っている。
データでの流通や他者との関係性を含め、彫刻を固定された一点物ではなく、拡散や派生を前提としたプロセスとして提示している。
CONCEPT / PROCESS
「人は対象の何を見てそのものらしさを感じるのか」をコンセプトに、現在は主に動物をモチーフに3DCGを用いて制作。立体を構成する無数の稜線の中から、形の本質を捉えた最小限の線を抽出し、バーチャル上のxyz座標に配置することで立体を構成している。
その最適化された曲線によって結ばれた緊張感のある造形は、360度どの方向から鑑賞しても、モチーフの特徴を捉えたミニマルな形になっている。
大学時代、裏側まで透けて見えてしまう画面上の3Dワイヤーフレームで形作られた立体に惹かれたことが、現在の彫刻表現の原点になっている。
稜線は裏側まで見えていると、逆に認識に混乱を起こす。見えすぎてしまっても不具合が生じるのだ。
対して、優れているクロッキーは、一本の線が描いてあるのみにも関わらず、骨格の硬さや肉の膨らみ、対象の雰囲気すら表してしまう。
そんなクロッキーやピクトグラムのような「最小限で形の本質を捉えた」線を探り出し立体を制作している。
デジタルツールを駆使して生み出すインダストリアルな線は、従来の“のみ”や“へら”などを使った「手仕事」で生まれる線とは異なった性質を帯びている。
かつて200年前に、手仕事で立体物を細部までくまなく写実的に表現したロダン。
その美学や手法に抗うように、形を崩したり、概念を表現することで発展した20世紀モダニズム彫刻。
そして21世紀。もはや現実世界でモデリング作業を行わないこの表現は、はたして「彫刻」と呼べるのだろうか?
また、CGデータを活用した3Dプリント技術を用い、ブロンズの他に、陶、ナイロン、樹脂などの様々な素材と、カラーバリエーションを掛け合わせることで、
彫刻表現と素材の特性との関係性や、彫刻作品の価値について研究している。
現代ならではの技術を用い、大量生産技術を駆使しながらも、それぞれがユニークである作品群。
その概念はかつてのアンディ・ウォーホルのように、従来の造形表現が持つ唯一性や、手仕事と機械技術との関係性、造形表現の価値そのものを問いかける。
文:美術解説するぞー/鈴木 博文